バイクと酒と…

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シマウマ酒店とクラドック

昨年8月の出来事

 

昨年の8月に仙台を訪れた。すると「シマウマ酒店」は同じ仙台市内にもう1店舗を新しく出店していた。「にほんしゅ屋 シマウマ酒店nico」という。シマウマの二店舗目だから一個二個のnicoだ。
広瀬通沿いの仙台駅に近い立地の路面店で、人通りも多く、カウンターとテーブル席のオシャレな内装で、女性も一人でもふらりと立ち寄れる、感じの良いお店だ。冷酒はグラッパグラスで提供している。細かい所にIさんのこだわりがある。見た目もオシャレだ。女性がこのグラスを傾けて飲んでいる姿は美しい。もちろん燗酒も飲める。
料理は中華だけでは無く、居酒屋メニューもあって多彩だ。色々食べてみたいが…これからはしご酒をする俺に、店長のトモゾウ君が少量ずつ酒肴を皿に盛ってくれた。どれも美味い。気軽に入れて燗酒が飲めて料理も美味しい、しかも店員さんのホスピタリティも抜群とあればこれは、流行らない訳がない。そう思いながら二軒目「シマウマ酒店」に行った。店内はお盆だというのに満席だ!一年来てない間にこの店のファンが増えたようだ。少しの間、外のカウンターで燗酒を飲みながら待っていると店内に通された。常連のお客さん同士が、満席の店内でお互い気を遣いつつ和やかに飲んでいた。いい雰囲気の中でしばらく飲んだ後、俺は気分を良くして店を出た。
実はこの日、仙台を訪れたのは他にも理由があった。「クラドック」というバーに行くためである。伊集院静の文庫本のエッセイに、仙台にあるバー「クラドック」の吉田荘一さんのドライマティーニが美味である、と書いてある。巻末を見ると、初出は15年程前の週刊誌の連載との事なので、今でも店があるのかは分からない。Iさんにも聞いてみたが知らなかった。ネットで検索すると店の場所と電話番号は分かったので、店に電話をかけてから訪ねてみた。国分町の中心からは少し離れたビルの地下にあった。
店に入ると、「クラドック」のマスター吉田荘一さんが一人で迎えてくれた。普段はマダム(奥様)と二人でお店をやられているそうだ。店内に俺の他には客はいない。45年の歴史ある店内を見回すと、壁には伊集院静長友啓典の作品と小貫政之助の絵画が飾られていた。
席に着き、早速ドライマティーニをお願いすると吉田さんは作り始めた。カウンターの中の吉田さんは高齢だが背筋がピンと伸びていて、ドライマティーニを作っている姿は迫力すら感じる。50年以上のバーテンダー人生で、何一つ妥協を許さず、何万回も繰り返してきたであろうカクテルをを作る所作は、どんな素晴らしいテクニックを持つ優秀なバーテンダーも真似は出来ないだろう。
目の前に供されたドライマティーニを一口飲んでみた。美味い。カクテルに関して俺は素人だ。そんな人間が吉田さんのドライマティーニをつべこべ言えるはずもなく、美味いとしか言えない。
その後、吉田さんと色々お話をしたのたが、伊集院さんが「誠実なドライマティーニ」と評する理由が分かった。吉田さんからすると息子のような年齢の、俺のような人間にも、きちんと対応してくださる。吉田さんのその姿勢を一言で表現するなら「誠実」だ。

この日は久しぶりのいい酒だった。吉田さんには、また来ますと行って店を出た。