バイクと酒と…

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あかつき館とポコペン その2

昨年末の出来事。その2

 

高知駅から、「汽車」に乗って移動する事90分。「あかつき館」と「ポコペン」のある黒潮町の土佐入野駅に到着した。先ずは「あかつき館」へ。

 

駅から海の方に向かって歩いて行くと、海の近くなので防風林があり、その中を道が伸びている。真っ直ぐ進むと左手に神社の鳥居が見えてきて林が開けた。そこが「あかつき館」の入口だった。
館内に入ると、一階が図書館、二階が上林暁文学館になっていた。二階に上がろうとすると、途中に小さくてきれいな貝殻がたくさん置かれている。その貝殻を1つ持って二階に行き、貝殻入れに入れる。貝殻の数で入館数をカウントしているようだ。アナログだが情緒があって、いかにも海の側にある文学館らしい。
二階に上がると、展示物を入れ替えている男性が居たので声をかけると、その人があかつき館館長のYさんだった。俺は自己紹介をして、ここを訪れるきっかけになった、安部夜郎さんの本の事や、高田馬場で偶然手に入れた上林暁の本の話をすると、大変喜んで頂いた。
館長さん自ら 館内の資料を丁寧に説明して頂き、上林暁がどんな生涯を送ったかがよく分かった。
1時間以上館内に居ただろうか、そろそろ「ポコペン」の開く時間、おいとましようと挨拶すると、Yさんが「これからどちらに?」と言われたので、あらうんど四万十の話をして実家に帰る前にこれからロケ地の「ポコペン」に寄って一杯飲って行く事を告げると、Yさんは間髪入れずに「私もご一緒します」と仰った。わざわざ遠くから訪ねてくれて、近くで飲むなら一人寂しく酒を飲ませるわけにはいかないと言うのだ。Yさんの気遣いに俺は感動し、嬉しくなった。Yさんは仕事を片付けてから行くというので先に「ポコペン」に向かう。
映画「あらうんど四万十〜カールニカーラン〜」のロケ地「ポコペン」は土佐入野駅のすぐそばにある。食べログには駅から30秒と書いてあるが、30秒もかからないくらいだ。
店内に入ると、映画の中のイメージだとカウンターとテーブルと座敷が一部屋のこじんまりとした店に見えたが、実際には他にも座敷があって、かなり大きな居酒屋だった。
晃、武、ヤス、シュンの4人が座っていたテーブルのすぐ近くのカウンターに座った。初めて来たのに、初めて来た気がしないのは不思議な気持ちだ。映画の中と同じでやはり雰囲気がいい。映画のシーンを思い出しながら一人で飲っていると、Yさんが やって来た。乾杯をしてから、色々な話に花が咲いた。
Yさんは俺の通っていた高校の先輩だった。高校時代は、文化祭で上林暁の研究の発表をされていて、その頃から上林の文学に興味を持たれていたので、筋金入りの上林暁ファンだ。大学卒業後は小学校の教壇に立たれ、定年退職後の2年前、あかつき館の館長になられたそうだ。
Yさんが「あかつき館」の館長になってから様々なイベントが企画されている。中でも昨年の10月には、あの芥川賞作家の又吉直樹を、「あかつき館」に招き講演会が行われた。
一般的に館長というと、名誉職のように感じる方も多いと思うが、「上林暁文学館」は学芸員も司書もおらず、Yさんが一人で実務をしている。展示パネルもYさんの自作だ。企画展の資料を外部から借りる場合は、Yさん自身が受け取りに行き、展示が終了するとYさんが返却に行く。遠方から来られる方には、休館日でも対応する事もある。人と人との繋がりを大切にしたいと仰っていた、そんなYさんの思いが、人と人とを繋げて、又吉直樹黒潮町まで呼びよせたのだろう。

今宵の酒宴も、俺が乗る列車の時刻が近づいてきて、お開きとなった。お互いにまたの再会を誓いYさんは帰って行った。Yさんは会計の時に俺の分も払ってくださっていた。急に酒に付き合っていただいた上に、初めてお目にかかった人にそこまで甘えるのは忍びない。何かお返しする事ができないか、東京に帰ってからも考えていた。

そこで、俺はYさんを微力ながらでも応援できればと思い、地元の高知新聞の投稿欄に文学館の事を投稿した。俺の稚拙な文章では掲載されないだろうと思っていたら、思いがけず掲載された。f:id:majes:20160915230507j:image

Yさんには投稿の事を知らせてなかったが、読んで頂いたのか、当日すぐに感謝のメールが来た。この投稿がどれほどの効果があったかは分からないが、日本中の文学館の中で東京から一番遠くにあるが、一番美しい場所にある文学館に、一人でも多くの人に足を運んでいただき、たくさんの貝殻を積んでもらいたい。

 

追伸

安部さんのボトルの店もYさんに教えていただき訪ねる事が出来た。

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